いよいよ来年の2024年の1月より新NISA制度が開始となります。
これを機にNISAを始めようとしている方も多いかと思いますが、始めるにあたって新NISA制度について様々な疑問を持たれているのではないでしょうか?
そういった方に向けて、今回からシリーズ企画として不定期で新NISAに関するよくある疑問について取り上げていこうと思います。
第一弾は、新NISAの目玉である1,800万円もの非課税投資枠の埋め方について取り上げます。様々なメディアでは、投資枠は毎年可能な限り一括投資をして最短の5年間で1,800万円を使い切るのが理想といわれていますが、実際本当にその方法で良いのか改めて考えてみようと思います。
一括投資は高値掴みのリスクがあるのではないか?
一括投資をして最短で1,800万円を使い切るというのは、これまでドルコスト平均法を散々おススメされてきた現制度のつみたてNISA利用者などからすると、かなり違和感を感じるのではないでしょうか?
実際私も、この最短理論を聞いたときに一番初めに「高値掴みのリスクがあるのではないか?」と思ってしまいました。
例えば、来年の2024年は新NISAを機に、投資を始める人のマネーが市場に流入し、オルカン(全世界株式)のような人気銘柄の価格が一時的に急上昇する可能性が考えられます。特に、退職金などで資金力が大きく、運用期間を短くしたいシニア層にとっては新NISAはピッタリの制度なので、2024年からそういったマネーが急に流入する可能性は十分に起こりうると思います。
それでは、運用期間を短くしたいシニア層以外は、高値掴みをしないように5年ではなく10年、20年をかけて1,800万円の枠を埋めて、ドルコスト平均法で購入単価を安定させたほうが良いのでしょうか?
実は今回の新NISAの制度の変更点を見ていくと、シニア層以外も(というより、若い世代こそ)5年で1,800万円の枠を最短で埋めてしまうことが、短期的に高値掴みをしてしまったとしても、最も効率が良い方法であることが分かるのです。
非課税期間無期限、保有枠の再利用可能が新NISAのポイント!
では、新NISAの制度のどの部分が今回の最短理論の支柱となっているのでしょうか?
ポイントは「非課税期間の無期限化」と「保有枠の再利用が可能」ということです。
一つずつ見ていきましょう
①非課税期間の無期限化
今回の新NISAでは、これまでつみたてNISAで20年とされてきた非課税期間が無期限となり、いつ売却しても保有枠の範囲内であれば非課税となります。
つまり、短期的にみると高値掴みをしてしまった場合でも、5年間という短い期間ですべての枠を使い切っていれば、若い世代の方で老後の資金のための投資であれば、残りの30年、40年間で得られる複利効果のほうがかなりの確率で大きくなるのです。
試しに、1年間の最大投資額360万円を年3%で運用したときの結果を見てみましょう
年数 | 金額 |
5年 | 4,173,387円 |
10年 | 4,838,099円 |
20年 | 6,502,000円 |
30年 | 8,738,145円 |
40年 | 11,743,336円 |
このように20年~30年の間で倍近い金額にまで資産を増やすことが可能であり、ここまで運用期間を持たせることができれば、短期的な高値掴みの影響はほとんど関係なくなります。
また、非課税期間が無期限ということは出口戦略をより柔軟に考えることができるというメリットがあり、これまでのように20年目を基準に売却時期を考える必要がないので、市場の状況が悪いときは無理をせず保有を続けるといったことも可能になるため、とにかく複利効果を高めるために早めに投資枠を埋めてしまえば、あとはゆっくり老後を待つだけということが可能になるのです。
②保有枠の再利用が可能
新NISAの特徴の2つ目として、新NISAで保有している資産を売却した翌年に、その資産に使用していた枠が復活し、再利用が可能になるというものがあります。
この制度があれば、あまり考えたくはないのですが、高値掴みをした後に、購入した銘柄に長期的に投資するだけの魅力がなくなってしまい、大損したという最悪のケースが発生しても、売却した後は非課税枠が元に戻るので、再度別の銘柄で新NISAをやり直すということができます。
もちろん、前の銘柄で損した分の金額は戻ってくることはないのですが、早めに投資枠を埋めていれば、前の銘柄でも元本は値下がりしていても利息は毎年付いているので、複利効果の恩恵は受けることができますし、当然早くから枠を埋めていれば、銘柄を乗り換えた後に受けられる複利効果もより大きくすることができます。
つまり、①、②の特徴はいずれも投資後の複利効果を邪魔してしまうような制度的な障害を取り払った内容であり、新NISAは従来のNISAよりも複利効果の恩恵をより大きく受けやすくなっているので、運用期間をより長くして、複利効果を最大化することが投資家にとって最も重要な要素であり、5年で1,800万円の枠を最短で埋めてしまうことが、短期的に高値掴みをしてしまったとしても最も効率が良い方法であるということになるのです。
自分の資金余力を考えて無理をせず、投資枠を早めに埋めよう!
今回の記事では、新NISAの1,800万円もの非課税投資枠の埋め方について取り上げました。
新NISAの制度はこれまでのNISAよりも、運用期間や使い切りの非課税枠といった制度的な拘束が撤廃されたことで、より複利効果の恩恵を受けやすい制度となっております。そのため、運用期間をより長くして、複利効果を最大化することが投資家にとって最も重要な要素となり、5年で1,800万円の枠を最短で埋めてしまうことが、短期的に高値掴みをしてしまったとしても最も効率が良い方法であるということになります。
ただ、これは当たり前ですが理屈上の話であって、年に360万円もの投資ができる資金余力が前提となる話であり、特に若い世代には実行するのは難しい話です。
ですので、新NISAにおいて大切なのは、より多くの金額の運用期間をより長くすることであることを理解して、自分の資金余力と相談しながら、無理をせず、自分のペースで投資枠を早めに埋めていくことが現実的で最適な非課税投資枠の埋め方になるでしょう!
今回は「【新NISA攻略法①!】1800万円の投資枠は5年で使い切るのが理想なのか?」について書きました。
記事の中で参考になる点があれば運用のヒントにしてみてください。
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