【ホントにイイこと!?】自社株買いのメリット・デメリットについて

投資のアレコレ

株式のニュースでうれしいニュースといえば何でしょうか?おそらく多くの方が、「高値更新」や「増配」というキーワードが思い浮かぶのではないでしょうか。

では、「自社株買い」のニュースを聞いたときはどうでしょう。「いいニュースそう・・・」と思っていても、実際に自社株買いのことについて知っている方は少ないのではないでしょうか?

そもそも、自社株買いは良いことなのでしょうか?実は私は自社株買いについてあまり良いことのように感じておりません。

今回は、そんな「自社株買い」の内容、メリット・デメリットについて解説し、今まで何となくで理解していた自社株買いについて、今後どう捉えるべきか考えていきます。

自社株買いとは?

自社株買いとは、自社の資金を使って、市場に流通している自社の株式を購入することを指します。自社株買いを行うと、流通する株式が減少し、企業の投資指標が改善され、株価が上昇する効果があるため、近年は自社株買いを行う企業が評価される傾向にあります。

最近では、NTTドコモソフトバンクが自社株買いを行い、非常に大きな話題になりました。

自社株買いが投資指標を改善する!

それでは、実際に自社株買いがどのように各指標に影響を与えるのか見てみましょう。

ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)は自己資本に対する利益の割合を示す指標で、数値が大きいほど、より効率的な経営ができていると判断される指標です。

ROEの計算式は、以下の通りです。
「ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本×100」

自社株買いを行うと、上記式の分母の「自己資本」の金額が減少するので、利益が増加しなくてもROEは向上するのです。

PER(株価収益率)

PER(株価収益率)は、利益に対する株価の割合を示す指標で、数値が小さいほど、株価が割安(オトク)だと判断される指標です。

PERの計算式は、以下の通りです。
「PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの利益」

自社株買いを行うと、上記式の分母の「1株当たりの利益」の金額が増加するので、株価が一定ならばPERは減少し、より株価のオトク感が生まれるのです

PBR(株価純資産倍率)

PBR(株価純資産倍率)は、純資産に対する株価の割合を示す指標で、1倍を下回ると投資した金額(株価)よりも、投資対象の持つ資産(純資産)が大きくなるので、数値が小さいほど、株価が割安(オトク)だと判断される指標です。

PBRの計算式は、以下の通りです。
「PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの純資産」

自社株買いを行うと、上記式の分母の「1株当たりの純資産」の金額が増加するので、株価が一定ならばPBRは減少し、より株価のオトク感が生まれるのです。

自社株買いのメリット・デメリット

自社株買いは、企業の指標を改善させることで、株価を押し上げられる効果がメインではありますが、それ以外にも投資家にとっては自社株買いには様々なメリットがあり、反対にデメリットも存在します。

メリット

自社株買いによる株価を押し上げ効果以外にのメリットとしては以下のようなものがあります。

  1. 既存株主への利益還元となる
  2. 敵対的買収の防止策となる
  3. ストックオプションが増加する

1番と2番は分かりやすいですね。企業が生み出した利益を用いて自社株買いを行うことによって、そもそも市場に流通する株式の量が減ることで、既存株主の持つ株式の値打ちは上がります。これは既存株主に対して、間接的に利益を還元していることになり、企業が株主を大事にしていることをアピールすることにもつながります。

そして逆に、敵対的買収を仕掛けるような投資家に対しては、自社株買いによる株式の市場流通量の減少が防止策となります。買収の恐れがない企業は安定した企業運営が可能になり、投資家にとっても長期の投資先として魅力的です。

3つ目は、自社株買いした株式をストックオプション制度に回すことで、よりその企業の社員が株価上昇のために頑張ってもらえるようになることで、企業業績の向上が期待できる点が投資家にとってもメリットといえるでしょう。

デメリット

それでは、反対に自社株買いのデメリットについても見てみましょう。

  1. 自己資本比率が低下する
  2. 内部留保が減少する
  3. 一時的に株価が急落する可能性がある

こちらも1番と2番は想像しやすいですね。市場に流通している株式を減らす以上、その企業の自己資本の金額は減少することになり、借り入れなどの他人資本の金額が変わらなければ、自己資本比率は低下してしまい、新規の投資家からみれば財務状況が悪化しているように見えてしまいます

また、自社株買いには当然それなりの資金が必要となり、その資金は企業が抱える内部留保が使用されます。

これまでの低金利時代であれば、どの企業も内部留保が高止まりの状態だったでしょうが、今後の金融政策の変動や、物価の高騰などの影響が避けられない時代においては、いざという時のために、企業の内部留保をある程度確保しておくことも重要視されると思うので、こういった自社株買いによる内部留保の減少が経営の悪化につながる可能性があることは注意すべきと思います。

また、3つ目として自社株買いにより株価が上昇した際に、利益確定のために売りが増える場合もあり、その場合、売りが優勢となり、一時的に株価が急落する可能性があります。自社株買いが株価の急落を呼べば、慌てていわゆる「狼狽売り」のような不要な行動をしてしまうこともあるので、自社株買いにはこういったリスクがあることも知っておくべきと思います。

自社株買いは本当に良いことなのか

さて、自社株買いの内容やメリット・デメリットを見てきましたが、そもそもの話として、自社株買いは良いことなのでしょうか?ここまで自社株買いのことについて書いてきましたが、私は自社株買いについてあまり良いことのように感じておりません

というのも、株式はもともと企業が新しい技術や事業に挑戦するための資金を調達する手段であるのに、自社株買いで株式を減らすことということは、その企業が大金を投じて挑戦できるようなプロジェクトが現在ないと言っているようなものだと思うからです。

そもそも、自社株買いなどしなくても、将来有望なプロジェクトへの挑戦を企業が打ち出せば、自然と株価は上昇します。自社株買いというのはどちらかというと、言い方は悪いですが「数字遊び」的な側面が強く、これをやったからといって企業の本質的な価値は変わらないと思っています。

ほかの投資家もそう考えているのか、自社株買いが市場で好感されないケースも多々見受けられます。

先述したNTTドコモやソフトバンクの自社株買いはビッグニュースで、株価も上昇しましたが、これはこの2社が携帯事業というドル箱事業で独占的な地位を占めていて、多少内部留保を自社株買いに回したところで将来への投資に影響しない優良な財務基盤があるため市場にも好感されたためであり、結局のところ、安定した財務基盤など企業の本質的な能力が投資において評価されるのです。

投資の基本は企業分析!自社株買いのニュースだけで買わないように!

今回の記事では、自社株買いの内容とメリット・デメリットについて紹介しました。

自社株買いは株価の上昇や、敵対的買収への防止策、ストックオプションの増加による業績向上が期待できるものです。

しかし、同時に企業が事業の将来的な成長への期待を捨てて、現在の株主に内部留保を還元してしまっているという側面もあることも事実であり、長期的にみれば企業の成長を阻害している行為であるともいえます。

そのため、自社株買いのニュースを聞いたからといって、すぐに株価上昇を期待して投資するのではなく、自社株買いの目的や規模を、現在の企業環境と照らし合わせて、今内部留保の還元を受けても、今後さらに内部留保を増やせるような事業環境にあるのかなど、基本的な企業分析を行ったうえで投資を検討することが大切です。

今後自社株買いのニュースを聞いた際には、こちらの記事のことを少し思い出してもらえると嬉しいです!

今回は「【ホントにイイこと!?】自社株買いのメリット・デメリットについて」について書きました。

記事の中で参考になる点があれば運用のヒントにしてみてください。

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