【自社株買いには「続き」があった!?】シチズン時計の例に見る自社株買いのゴールについて

投資のアレコレ

自社株買いというと別記事でも触れましたが、自社の資金を使って、市場に流通している自社の株式を購入することを指していて、株価の上昇や、敵対的買収への防止策、ストックオプションの増加による業績向上が期待できるものです。

ですので、大規模な自社株買いのニュースが発表されたときには株価の急上昇が観測されることがよくあります。最近ですと、シチズン時計(7762)が発行済み株式総数の約25%の自社株買いを発表して大きなニュースになりました。

しかし、この自社株買いについて、企業が株式を取得した後、どのように処理しているかを知っている方は少ないのではないでしょうか?

実は、株式取得後の処理方法は2種類あり、そのどちらを選ぶかで市場の反応は正反対のものになり、もしかしたら自社株買いのニュースで上昇した株価が急落する可能性もあるのです。

今回の記事では、シチズン時計の自社株買いのニュースを例に、自社株買いのその後の処理とその影響について考えていきます。

自社株買い後の処理は2種類ある?それぞれの影響は?

自社株買いによって取得した自社株の処理方法は、①消却②処分の2つがあります。

この2つの方法は名前こそ似ていますが、意味合いは全く違っており、株価に与える影響も異なります。

それぞれの内容について具体的にみていきましょう。

①自社株を消却する場合

自社株の消却とは、自己株式を内部で消滅させることで、資本準備金や剰余金を取り崩す形で、自社株が消却されるケースが多いです。

自社株の消却では発行済み株式総数が減少し、一株あたりの利益や株主資本比率が向上することから、既存株主からの好感を得やすいという特徴があります。また、企業側から見た視点では、株主への配当の負担を下げられるというメリットもあります。

②自社株を処分する場合

自社株の処分とは、第三者に売却することで、一度取得した自社株を再度市場に流すことになるので、発行済み株式総数が変化しないのが特徴です。

処分だと市場に自社株が戻ることになりますので、自社株買いのニュースを受けて、一株当たりの利益が改善することが期待されて上昇した株価が下落する可能性が高くなります

ちなみに・・・

株価が下落する可能性が高いのに自社株を処分する理由は何でしょうか?一番の理由は資金調達です。

自社株の消却の場合、資本準備金や剰余金を取り崩す場合が多いので、減資となります。逆に自社株の処分の場合は、自社株を市場で売却して資金を得られるので増資となり、通常の増資よりも手続きが簡便なため、上場企業の企業再編などでよく利用されることがあるのです。

以上が自社株を処分するための2つの方法です。

2つの方法を見てお気づきの方もいるかもしれませんが、自社株買いは市場に流通している自社の株式が減少することで、株価の上昇が期待されますが、実際に株式の流通量が減少するかどうかは取得した自社株式を「消却」するのか「処分」するかで全く変わってくるのです。

そのため、本来自社株買いにおいて、処理方法は非常に重要な要素であるはずなのですが、それが意識されることはほとんどなく、自社株買いであれば例外なく株価が上昇すると思っている方も多くいるのが現状です。

今回のシチズン時計の自社株買いについて

それでは、今回のシチズン時計の自社株買いはどちらの方法で処理がされたのでしょうか?

今回の自社株買いでは、4800万株の自己株式の消却が行われました。その規模は、消却前の発行済株式総数の約16%にもなり、株価に与える影響も非常に大きいものと思われました。

しかし、実際のチャートを見てみると、自己株式の消却のニュースが発表された6/22の値動きはそこまで大きくありませんでした。(ちなみに株価が急落している6/8は自社株買いの終了が発表された日でした。)

このチャートの動きは、自社株買いのニュースが発表された段階で、株主還元のための自社株買いであることが判明しており、自社株は消却されることが見込まれていたため、特にサプライズがなかったからだと思われます。

今回のような大規模な自社株買いのニュースは、発表された段階で株価が急上昇する場合が多く、実際にシチズン時計の株価チャート上でも最も株価が急上昇したのが、自社株買いのニュースが発表されたときでした。

このチャートを見ると、処理方法の発表なんて株価に全然影響を与えていないように見えますが、逆を言うと、もし6/22に自社株の消却ではなく、処分が発表されていた場合、株主にとっては悪いサプライズであり、その処分金額の規模から考えても、株価はきっと驚くほどに急落していたでしょう。

何が言いたいかというと、自社株買いのニュースだけで、内容を確認せずに株価上昇を期待するのはやっぱり危険だということです。

自社株買いのニュースだけでの投資は危険!処理方法も確認しよう!

今回の記事では、自社株買いの後の自社株の処理方法について取り上げました。

自社株買いのニュースは、発表された段階で株価が急上昇する場合が多いですが、実際にそれが株主にとって有利な内容であるかどうかが確定するのは、企業が取得した自己株式をどうやって処理するかが決まってからであり、万が一自社株を処分するとなった場合は、株主にとってメリットはほとんどない場合もあるのです。

そのため、自社株買いの文字だけで投資判断をすることは危険であり、自社株買いのニュースを見た時には、必ず企業側の自社株買いの意図が株主還元にあるのかどうかを確認する必要があると思います。

今回は「【自社株買いには「続き」があった!?】シチズン時計の例に見る自社株買いのゴールについて」について書きました。

記事の中で参考になる点があれば運用のヒントにしてみてください。

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